出荷納期が短いと品質クレーム

なぜリードタイム短縮がホルマリンクレームを生むのか

 保管期間の問題から生じるクレームの事例を紹介します。
 加工所を取り巻く受発注環境が変化しています。納入先は在庫コストを嫌い、出荷期限ギリギリまで発注を遅らせる傾向が強まっています。一方、要求される納期は短く、加工所は受注のタイミングも数量も読みにくい状況に置かれています。
 この環境変化が、ホルマリン残留濃度に関するクレームを生んでいます。以前は出荷までの保管期間が自然な「揮発時間」として機能し、加工時に使用したホルマリンが基準値以下まで低下した状態で製品を届けることができました。しかし、発注から納品までのリードタイムが短縮された結果、ホルマリンが十分に揮発しないまま出荷され、品質試験に合格できないケースが発生しています。

解決のために~工程管理から業界構造まで~

 技術的な解決策としては、加温した換気室での保管といった対処法がありますが、これは追加コストの発生を意味します。
 現実的な解決策の一つは、「最低保管期間」を品質工程の一つとして生産計画に組み込むことです。繊維産業では各工程間に中間品が滞留することが非効率として批判されますが、品質管理においては、意図的に時間をかけることが全体最適につながる場合があります。
 サプライチェーン全体の視点でも同様のことが言えます。組み立て現場へのジャストインタイム納品は、その現場単体のコストを最小化する一方で、上流の工場にコスト負担を転嫁している側面があります。一点の最適化が全体の非効率を生んでいないか、改めて問い直す必要があります。
 さらに、根本解決としては、ノンホル(ホルムアルデヒド不使用)加工への切り替えがあります。現状ではコスト高と性能低下を理由に敬遠されがちですが、「ノンホル」を付加価値として訴求し、製品単価と加工所の加工賃の両方を引き上げるビジネスモデルが成立すれば、有力な選択肢となります。ただし、製品単価を上げることは極めて難しく、繊維産業全体が疲弊しているのが現状です。

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