白い生地だけにトラブル発生

 繊維製品はいくつかの色のバリエーションを作り、商品展開する必要があります。このとき、白い生地だけにクレームが生じる場合の考えられる原因をまとめておきます。

①他の色は目立たないだけ

 汚れなどが付着しているが、目立たないだけ。白い生地だけが目立ってしまう。

②染料と同じ性質のものが、特異的に付着

 白以外は、染料があるため、付着できないかまたは付着量が少ない。 

③白い生地だけが加工されていて、その加工剤と反応

 白い生地だけに用いる加工剤としは、蛍光増白剤、黄変防止加剤などがあります。

*蛍光増白加工:白をより白らしく見せる加工。白い生地は、経時変化で黄色みが生じ、くすみます。そのため、黄色の補色である青みを加えることで、白く見える様に加工します。その方法は紫外線を吸収し、青色を放出する薬剤を加工します。

*黄変:色相が「黄み」がかる現象。一例として、BHT黄変があります。

*BHT黄変:ポリプロピレン・ポリエチレン等包装フィルムに含まれる酸化防止剤(BHT)が昇華し、酸化窒素ガスが反応して黄変する現象。黄変と言われるが、色相は黄色からピンク色。反応物は日光を照射した場合や酸性下で無色になり、これらの方法がBHT黄変の簡易な確認方法として使われます。
 この現象を防ぐためリンゴ酸等の酸で生地を処理し、生地を酸性側に調整する加工を「黄変防止加工」と称します。

④染色していないので、染色工程や熱履歴が異なる

 白い生地以外は、染色時に熱を与えているので、生地は収縮しています。そのため、消費者のところでは収縮しない場合があります。しかし、白い生地だけは、与えた熱が不充分で収縮せず、消費者が使用している時に収縮することがあります。(主に天然繊維)

*熱履歴:染色加工やセット加工で、どのくらいの温度で、どのくらいの時間処理したかの記録。収縮することはなく。生産ロッドが同じな生地であっても、熱履歴が異なると収縮率は異なると考えて良いでしょう。

*セット加工:繊維の形態を安定化させる加工。収縮防止や形状固定を行う。加工した温度よりも低い温度ではセットの効果は続きます。

 ④と同じ理由で、黒い生地だけにクレームが生じる例として、「見本反の染色で堅牢度が悪い→量産反を原着糸に変更→履歴が異なる→寸法変化率が異なる」といったケースがあります。

*原料着色糸【げんりょうちゃくしょくし】(略して「原着糸」、「原着」):再生繊維や合成繊維で繊維を製造する場合に、糸の原料に顔料を入れて、着色した糸。
 染色できないポリエチレンやポリプロピレンは上記の様な方法で着色する。製造ロットが大きくなるため、定番色のみ作られていることが多い。
 衣料用繊維の場合は、濃色(ほとんどのケースでは黒)で堅牢度が問題となる場合に、原着糸が使用されることがあります。

初稿2014/06/18 改正2020/08/22