繊維分野で使用される力や強さの単位

グラムフォースからニュートンへ

 繊維の分野で使用される力の単位は、N【ニュートン】です。以前は、「gf【グラムフォース】」や「kgf【キログラムフォース】」が使用されていました。(グラム重【ぐらむじゅう】、キログラム重【きろぐらむじゅう】とも言われていました)
(個人的にはgfで育っているので、感覚的にgfの方がわかりやすいのです)

力と重さの区別

 力の単位を「g」や「kg」と書いてある文献も見られますが、力(荷重)と重さを区別するために正しくは「f」をつけるのが正しい表記です。この点では、力(単位:Nなど)と重さ(単位:gなど)との単位がはっきり区別されることになりました。

gfは感覚的にわかりやすい単位

 1gfは、「1gのおもりをつり下げた時にかかる荷重(力)」です。一方、1Nは、「質量1kgの物体に1m/s2の加速度を生じさせる力」と定義されています。これらの定義では単位として、1gfの方が1 Nより感覚的にはわかりやすいと思います。しかし、厳密に言うと場所によって重力加速度の大きさが異なるため、表示は1gfで同じなのですが、場所により力は異なることになります。

場所の違いによる重力加度速定数

 場所の違いにより、重力加速度定数は異なります。国土地理院のHPより抜書きすると下の表になります。

場所重力加速度定数(m/sec
北海道札幌市9.805
東京都(23区)9.798
沖縄県(本島)9.791
 場所の違いによる重力加速度定数

引張試験機の校正

 古いやり方ですが、引張試験機のgf単位での校正として、おもりをつり下げる方法があります。まず、おもりをつり下げずに荷重の表示が0になるようにします(0点調整)。次におもりをつり下げます。例えば100gであれば、この時の荷重の表示が100 gfになるようにします(スパン調整)。
 この方法をニュートン単位で行う場合、100gのおもりをつり下げたとき、100g×「その地域の重力加速度定数」にあたる力にあわせます。
 100gのおもりで校正した場合、合わせる数値は下の表の様になります。

 北海道札幌市東京都(23区)沖縄県(本島)
gf単位100gf100gf100gf
SI単位0.981N9.7980.979N
 100gのおもりで校正した場合、校正で合わせる数値

(有効数字2桁なら0.98Nですべて同じになります)

現在の校正方法は、チェックボックスという一定荷重相当の電気信号を送ることでスパン調整を行う方式が主流になっています。

標準重力加速度と1kgからNへの変換

 重力加速度の値は場所によって異なるため、標準重力加速度の値を、正確に 9.80665 m/s2 と規定しました。このため、
 1kgf = 1kg×9.80665m/s2 = 9.80665 kg m/s2 = 9.80665N となり、
 1gf=0.00980665N=0.980665 cNとなります。
 逆に1N=0.10197 kgf

変換時の近似値

 近似値としては、1Nが約0.1kg f=100gfです。また、1cN【センチニュートン】(約1gf)や1mN【ミリニュートン】(約0.1gf)なども使用されます。
 近似値の例として、滑脱の試験で与える荷重として、5kgfは50N。12kgfは120Nとしている規格もあります。JISL1096では、この様な近似値ではなく、5kgfは49.0N 12kgfは118Nの様に有効数字3桁で変換しています。

繊維素材の強さを比較

 糸の強さは破断強度(=糸が切れたときの強度)として、[gfやN]で示せばいいのですが、太い糸の方が強いので、繊維素材ごとの強さを比較する場合は、破断強度を繊度で割った値で比較します。
 一般的には、強さの尺度として破断強度を断面積で割った値を使用します。強度(=荷重=力)を断面積で割るため、圧力(力/断面積)と同じ単位になり、Pa【パスカル】を用います。
 強さがパスカルで表示されると違和感があるとは思いますが、破断強度を断面積で割った値と考えればわかりやすくなるのではないでしょうか。
 糸でも同様に考えられますが、断面が真円でない場合や、断面が円形であっても、何本か集まり撚られて変形していることもあるので、断面積を簡単に求めることはできません。そこで、太さの尺度であるデニールやデシテックスなどで割って使用します。単位としてはgf/dやN/ dtexになります

素材ごとの強さ

 糸の太さが異なれば、絹の方がポリエステルよりも強いことがあります。しかし、デニール当たりの荷重で素材ごとの強さを比較することができます。
 例えば、絹は、3~4gf/d、ポリエステルは、4.3~6gf/d(ある程度の幅で表記することが一般的です)
 当然、同じデニール当たりでは、ポリエステルが強いことがわかります。
 実際の糸の強度の目安は、これらの値に繊度をかけて、
絹21d中の場合は、63~84gf、ポリエステル50dの場合は、215~300gfとなります。
 更に、同じ糸であっても、乾いている場合(試験では「標準時」といいます)や、湿っている場合では、(試験では「湿潤時」といいます)破断強度の値は異なりますし、同じ素材でも短繊維か長繊維かの違い、グレードや製造方法によっても異なります。
 また、糸の実測値がこれらの値より低くなっていると、加工などで劣化したと推測できることもあります。

gf /dからN / dtexへの単位変換

 この様に繊維の強さを表すときに、gf /dが使用されていましたが、単位のSI化のため、gf /dからcN / dtexへの単位変更がされています。
 1gf=0.00980665N=0.980665 cN(ここで、変換後の桁数を合わせるためにcNを使います)
 1d=0.1111tex=1.1111dtex
 1gf /d=0.98065cN /1.1111 dtex=0.8826 cN / dtex

 0.88は約0.9であり、感覚的にあまり変わりません。古い文献では、gf /dが使用され、新しい文献では、cN / dtexが使用される傾向になっています。

フィラメント数の違いを考慮していない糸の強度

 糸の強度をもとめるのにデニールやデシテックスで割っていますので、糸を構成するフィラメント数が異なる場合でも同じ値になります。例えば、ポリエステル75デニールでは、通常36本のフィラメントで構成されます。一方、ハイカウントと呼ばれるポリエステル糸は極細のフィラメントが使用されており、75デニールでは144本のフィラメントで構成されます。
 また、糸の強度は、撚糸の条件などで変わるので、もともとばらつきが大きい数値ですが、この計算方法では、フィラメント数の違いを考慮していないことに注意が必要です。

読み方としては、75デニール36本は【ななごーさぶろく】。75デニール144本は【ななごーいっちょんちょん】(あくまで、ローカルな読み方です)

初稿2018/10/07 改正2021/06/20

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