丸羽と片羽


 手機【てばた】で、よく使われる言葉に、「丸羽」、「片羽」があります。これらは、ひとつの筬目に糸を何本まとめて通すかを表します。
「丸羽」:ひとつの筬目に2本の糸を通すこと。2本入れ。
「片羽」:ひとつの筬目に1本の糸を通すこと。1本入れ。

力織機の場合

 これに対し、力織機【りきしょき】1) では、「○羽○本入れ」という表現がよく使われます。これらは、経糸の密度を表すとき使用されます。○羽とは、単位長さあたりの隙間の数を指します。また、単位長さには、センチ、インチ、曲寸【かねすん】、鯨寸【くじらすん】などが使われます。
 例えば、「50羽2本入れ」は、単位長さあたり、50個の隙間にそれぞれ2本の糸を通すので、50×2=100(単位長さ当たり)となります。また、「100羽1本入れ」は、単位長さあたり100個の隙間にそれぞれ1本の糸を通すので、100本(単位長さ当たり)となります。
つまり、どちらも単位長さ当たり100本となり、同じ経糸密度となります。

丸羽と片羽の使い分け

 では、丸羽と片羽はどの様に使い分けるのでしょうか?
丸羽と片羽の使い分けについてネットで調べると、以下のような情報が見つかりました。
・しっかり織るためには、丸羽を使う。2本の経糸が寄り添うので「密」になる。
・ウールは丸羽(2本入れ)、シルク・麻は片羽(1本入れ)。

筬が粗い場合

 筬が粗い場合は、同じ筬目にある糸が筬目の中で寄り、隣と距離が広がって縦方向にスジのように見えることがあります。これを筬筋【オサスジ】と言い、織物欠点となることがあります。逆にこれをデザインとして活かすこともあります。つまり、気になれば、織物欠点。気にならない、もしくはよく見えるのであれば、デザインとなります。後者の例としては、「模紗組織【もしゃそしき】」2) では、3本入れにして、糸を3本一組にすると、3本ごとに糸がまとまり、隙間ができて組織の特徴が際立ち、きれいに見えます。
模紗組織については、こちらを参考に 

筬が細かい場合

 筬が粗い場合は、同じ筬目にある糸同士でスレが生じます。これは製織時の糸切れにつながります。また、あまり細かい筬は避けるべきです。細かい筬は扱いが難しく、糸を筬に通すときに間違いも多くなります。また、糸を通すときに筬を壊すリスクも高まります。この様な考えで、粗い筬を用いて、同じ筬目に何本かの糸をまとめて入れることも考える必要があります。

まとめ

 筬が粗い場合は糸が寄り、筬が細かい場合は糸が擦れます。これらを理解し、実際に織ってみて欠点が目立つ場合は方法を変えて織り、どちらが良いかを比較して筬に何本入れるかを決めます。

注 

1)力織機:機械動力のある織機。手機に対する言葉。

2)摸紗組織:広い意味では「紗」の様に見える組織。擬紗【ぎしゃ】とも言う。「紗」の本来の意味は、経糸を左右にずらす機構を有する織機で製造する隙間の多い生地を指す。擬紗組織は、上記の機構を持たない織機で、紗の様な隙間の多い生地を織るために工夫した組織の総称。

初稿2024/05/25

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