引裂強さ試験における「ヨコ切れ」とは?

引裂強さ試験とは(織物の場合)

 織物の引裂強さ試験(シングルタング法・JIS L0196 8.17.1 A法)では、短冊型に切り取ったサンプルの下部に切り込みを入れ、分かれた2つの部分をそれぞれ、上下に引っ張ります(下図を参考)。
 このとき、サンプルのヨコ方向にある糸が切断され、切り込み方向に破断が進行します。破断時の荷重を測定し、その最大値を「引裂強さ」とします。

引裂強さおよび引張強さのサンプルの状態と荷重をかける方向を示す概念図

引裂強さ試験のたて・よこ

 JISでは、「よこ糸引裂強さ」とは、よこ糸を切断した場合をいい、「たて糸引裂強さ」とは、たて糸を切断した場合を言います。上図では、たて糸を青で、よこ糸を緑で表示しました。たて糸をサンプルのタテ方向に採取すると、たて方向のサンプルとなります。この図の場合、引裂強さ試験では、よこ糸引裂強さ、引張強さ試験では、たて方向の引張強さとなります。このように、方向に注意しなくてはなりません。

ヨコ切れが生じる原因

 引き裂き強さ試験では、下図のa)の様に引裂かれ、破断が進行しますが、サンプルのたて糸とよこ糸の強度が著しく異る場合は、下図のb)の様に「ヨコ切れ」が生じます。
 よこ糸よりも、たて糸が弱い場合、サンプルを引裂き続けると、よこ糸が切断せず、切り込みの方向に対して破断が進行せず、たて糸が切断されながら、ななめに破断が進行していきます。場合によっては、切り込み方向に対しほぼ垂直なることもあります。
 この様にサンプルの弱い部分が破断していくので、その荷重は最大値にならず、これを異常として扱い、状態記録として、「ヨコ切れあり」と結果に付記します。

引裂強さ試験後のサンプルの状態

引裂強さを向上させるには?

 一般には、糸を太くすれば、引裂強さは増加します。しかし、糸のすべてを太くする必要はありません。一定間隔に太い糸があれば、十分です。そこで、一方向だけでなく、たて・よことも、一定間隔で太い糸をいれた構造を持つ生地が開発されました。この生地を「リップストップ(ripstop)」といいます。ナイロンやポリエステルなどの生地で、アウトドア用など力のかかりやすい場合に用いられます。一定間隔に入れた太い糸のため、太糸を使った部分がやや盛り上がり、格子状に見える特徴があります。
 この生地を用いた製品では、生地が引裂かれて破断が進行した場合、その太い糸の場所で破断の進行が停止します。
 太い糸の代わりに、同じ太さで強い繊維を入れるのも同じ考え方です。この方法では、盛り上がりがなく、盛り上がった太い糸が摩擦される事がありません。

引き裂き試験の異常な状態とは?

 「ヨコ切れ」というの用語を必ずしも使う必要はありません。JISに書かれているのは、「引裂かれた状態に異常があった場合は試験報告書に付記する」という表現になっています。ただ、引裂強さの試験で、異常な状態としては、この「ヨコ切れ」が一番多く発生します。その理由は、たて糸に比べてよこ糸を太くした設計の生地が多いためです。

2008年2月29改正 2020年9月5日