織物の三密

 今年の漢字(2020)には、「密」が選ばれました。

最近、「三密」が話題なので、この「密」について考えてみます。「密」は、「つまりぐあい」のことです。

  • どんなものがつまっているのか?
  • どのくらいの範囲(長さ、面積、体積)につまっているのか?

 これらを考えると理解しやすいと思います。そして、単位がこれらを表しています。つまり、単位を見るとこれらがわかるのです。

密度の「意味」は?

一般に、密度とは、「単位体積あたりの質量」のことを指します。この場合、

  • もの:質量(いわゆる重さ)
  • 範囲:体積(立方センチメートルあたり)
  • 単位:g/cm

ということになります。

「人口密度」であれば、

  • もの:人の数
  • 範囲:面積(平方キロメートルあたり)
  • 単位:人/km

織物の三密

さて、織物で「密」考えると、①繊度、②打ち込み、③目付 となります。

繊度

①繊度:繊度を糸の太さと認識している方も多いと思いますが、9000mあたりの糸のつまりぐあいを示しています。つまっている方が、「太い」と考えます。

  • もの:質量
  • 範囲:長さ(9000mあたり)
  • 単位:デニール (g/9000mとかけなくもない)

*紡績糸で使用する「番手」は今回は省略。

打ち込み

②打ち込み:これは、長さ方向に対しての糸のつまりぐあいです。

  • もの:糸の本数
  • 範囲:長さ(1cmあたり)
  • 単位:本/cm

*打ち込みは、緯糸の時に使用。経糸の時は、経糸密度と言うことが多いです。長さの単位もcmでなく鯨寸、インチの時もあります。

目付け

③目付け:これは、面積あたりの糸(経糸・緯糸合わせて)のつまりぐあいです。

  • もの:質量
  • 範囲:面積(平方センチメートルあたり)
  • 単位:g/m

というわけで、織物には三密があることがわかりました!

関連性は?

意匠撚糸などが使われたり、パイル織りなどの特殊な織物は除きますが、①、②、③は関連し、2つが決まると残りの一つが決まります。

*質量:重さや重量ではなく正確な表現として使用。日常生活では、同じものと意識しても問題はありません。詳しくは省略。

*質量と密度(体積密度)とを区別がついたのは、近代からです。今でも、「綿は鉄より軽い」とか言ってしまうことがあります。これは同じ体積(イメージ的には容積、ひとかたまり)で比べた場合のこと、つまり密度のことを言っており、それを質量(重いー軽い)と区別なく使用してしまっています。

初稿2020/05/24