引張強さ及び伸び率試験とは
「引張強さ及び伸び率試験」とは、短冊形の試料の長手方向に荷重をかけ、破断時の荷重(強度)とその時点での伸び率(伸度)を測定する基本的な試験です。強度と伸度を測定しますので、「強伸度試験」とも呼ばれます。織物では、JISL1096 8.14.1 JIS法のうちA法(ストリップ法)を用いることが一般的です。試料の切り出し方法に以下の2種類があります。
①ラベルドストリップ法:規定幅より大きく切り出した試料から糸を抜き、規定幅に調整する方法
②カットストリップ法:試料を直接規定幅に切り出す方法
通常はラベルドストリップ法が使われますが、糸を抜きにくい場合や糸を抜くことで試料に影響を与えそうな場合はカットストリップ法を用います。
ダンベル型試料との違い
革やプラスチックなどの試験では、試料を「ダンベル型」に型で切り抜いて測定します。この場合、荷重が中央に集中し、ほとんどの場合、そこから破断されます。一方、織物の場合、試料をダンベル型にすると端の経糸(たていと)が途中で途切れているため、その部分は強度には無関係となります。そのため、短冊形の試料が用いられます。
チャック切れとは
試験中に試料を固定するチャック部分で破断が起きる現象を「チャック切れ」といいます。上記の「ダンベル型」を試料とした場合は、チャック切れが生じにくくなります。
①表記の仕方:チャック部分から1cm以内で破断した場合は「チャック切れあり」と記録します。「チャック切れ」を試験として無効とする考え方もありますが、最低でもその値までの強度があると考え、参考値として扱います。この方法は、測定不能よりも実用的です。
②原因:チャックで強く挟むことで試料が潰れ、他の部分より弱くなることが主な原因です。また、サンプルに荷重を与えていくと、試料の中央の幅が狭になることで横方向の力が発生し、それがチャック切れを引き起こす場合もあります。
③注意点と防止策:チャックの固定を弱めすぎると試料が滑り、測定ができなくなることがあります。またその防止策として、試験機メーカーでは、試料との接触部分(フェイスという)の摩擦を高める波型や凸凹のチャックを提供しています。現場では、ゴム板や厚紙を挟むことでチャック切れを防止しています。
円柱状のサンプル
ロープや糸などの円柱状の試料は、チャックで強く挟むと潰れて変形し、チャック切れが生じやすくなります。これを防ぐため、試験機メーカーでは、「糸専用のジグ」を用意しています。これは、試料をジグに巻き付けて測定します。
その他、「引張強さ及び伸び率試験」での余談を述べると
①固くて脆い試料
固くて脆い試料は、チャックで固定する際に破損することが多く、測定が非常に困難です。また、チャック時に見えないヒビが原因で試験途中に破断することも多く、正確な強度評価が困難です。
②ストレッチ性素材
ストレッチ性のある生地では整理加工の影響で幅が変わることがあります。そのため、幅でなく「幅方向の糸の本数」を指定して試験する場合もあります。
③クラブ法
「引張強さ及び伸び率試験」では、JIS法のうちA法以外にB法(クラブ法)があります。
クラブ法は、幅100mm・長さ150mmの試料の2箇所を挟んで測定する方法です。おそらくはB法は試料の幅の影響が少なくなる様に考えられたのだと思われます。例えば、A法の試験を観察すると、サンプルのほぼ中央部で幅が細くなり、生地というより、紐のようになってから破断する場合もあります。B法ではここまで極端なことは生じません。
なお、この試験はアメリカの試験規格基となっており、その影響で、つかみ間隔が76.2ミリ(=3インチ)に設定されていました。これが現在の規格では、つかみ間隔が76ミリ(≒3インチ)に改正されています。この様な改正は、JIS規格がミリやメートルで統一されているため、それに合わせてインチの数字を丸めたものです。
④JIS法とISO法
引張強さ及び伸び率試験JISL1096では、JIS法、ISO法と大きく分かれています。これは、JISとISOを統一する場合の「策」で、両方法を認めるやり方です。ISO法が付属書の方にみに記載されており、JIS規格の中では「付け足し」の様な印象を受けることがあります。
2024/12/17