抗菌防臭繊維と消臭繊維の違いとは

抗菌防臭繊維

 抗菌防臭繊維:菌由来の臭気について、菌を殺菌or制菌することで、臭気を抑制するのが抗菌防臭繊維です。例えば、汗は、汗自身が臭うのではなく、汗を養分として、黄色ぶどう状球菌が増殖し、臭気が発生しています。

 代表的な製造方法は、繊維に抗菌物質を練り込みます。

①ポリエステルなどの溶融紡糸の場合は、抗菌物質として耐熱性がある金属(例えば、銀、銅)を使用します。銀であれば、銀イオンを発生させて殺菌します。この場合、完全に乾燥している場合、銀イオンが発生せず効果がありません。

②レーヨンなどの湿式紡糸では、抗菌物質として耐熱性がないキチン・キトサンなども可能です。

消臭繊維

消臭繊維:臭気物質を吸着or分解することで、臭気を抑制するのが消臭繊維です。臭気物質は汗臭としてアンモニア、酢酸、イソ吉草酸【イソキッソウサン】、加齢臭としてノネナールなどを対象としています。

 代表的な製造方法は、繊維に機能を持った物質を練り込みます。

①吸着の場合は、繊維に多孔質の物質を練りみます。吸着のため、一定量吸着すると飽和してしまいます。そのため、洗濯することで吸着した物質を除去します。

 吸着した物質を「洗濯」して除去する方法は、繊維製品の場合、多く使われる方法です。同じく消臭効果を持つ活性炭(多孔質)の場合は、加熱や天日干しをすること吸着した物質を除去します。

②分解の場合は、光触媒等を練り込みます。例えば、繊維に練り込まれた酸化チタンに、紫外線が当たるとラジカルが発生し、臭気の原因の有機物が分解されます。カーテンなどにペット臭が付着し、それが、放出されて臭気を発する場合などに適しています。

 この場合、分解された物質が繊維に付着しています。そのため、洗濯することで吸着した物質を除去します。

トリポーラス

補足:最近、ニュースで取り上げられている「トリポーラスファイバー」は、レーヨンにソニーが開発した多孔質炭素材料「トリポーラス【Triporous】」を練り込み繊維化したもの。トリポーラスの「トリ」は、「3種類」、「ポーラス」は、「多孔質」の意味。
 大きさが異なる3種類の穴を持つことで、幅広い吸着性能を持ちます。(吸着能力を活性炭と比較すると、空気中ではアンモニアを6倍、水中ではメチレンブルーを2倍の速度で吸着できるという*)
 さらに、この素材は、黄色ブドウ球菌やモラクセラ菌(生乾き臭の原因)に抗菌性を持つ抗菌防臭繊維でもあります。原理については、調べましたが、わかりませんでした。
 このページの文章では、抗菌防臭繊維と消臭繊維の違いを説明してきましたが、「トリポーラスファイバー」は、抗菌消臭繊維でかつ消臭繊維になります。
 また、炭素材料を練り込んでいるため、色が黒くなるため、多色展開が難しいものの、一種の原料着色であるため、色落ち、汚染、退色の心配はないことは利点になります。

*)ヤフーニュースを参考:
https://news.yahoo.co.jp/articles/9c20cc31faf70e498a041320321eb038fa5ec81f?page=1

 なお、今回は、後加工による機能付与は除いていますが、考え方、原理はほぼ同じです。

初稿2019/06/06 改正2020/08/08

この記事はわかりやすかったですか?

コメントを残す