パイル生地や起毛(別珍やコール天)やフロック加工を行った生地、さらに、モール糸や甘撚りの紡績糸などを使用した生地などでは、毛羽の脱落がクレームになることがあります。その評価方法としては、以下の方法があります。
1)毛羽付着試験(QTEC法)
(QTECの読みは、【キューテック】)
概要:セロハンテープを生地につけておもりを乗せる。所定時間後、はがし、テープにどのくらいの毛羽がつくかを比較。QTECセロハンテープ法と呼ばれることもあります。
おもりや毛羽付着試験判定用スケールはQTECで販売しています。
試験方法や基準について、詳しくはここ
2)パイル保持率JIS L 1075 C法
概要:摩耗試験Ⅱ型(学振型)に生地を置く、摩擦試験の時に使用する白布の代わりに、耐水研磨紙として、摩擦する。摩擦後、生地が削れているので、残った質量を測定し、次式から「パイル保持率」を計算します。
パイル保持率=[試験後に試験片aを試験片bの大きさに切り取ったもののパイルの残留質量(g)]/[試験片bのバイル質量(g)]×100
試験片a:比較のための元の生地。切り出し後、試験片bと同じ大きさに切りそろえる
試験片b:実際に試験を行う試料片
条件(研磨紙が粗すぎるか、回数が多い場合)によっては、パイル以外の基布も紙やすりが削り取ってしまう場合もあります。この場合、正確な意味で、「パイルの保持率」ではないので、試験の方法にこだわらず、試験条件を緩やかに変えた方がよいと思います。
基準値:試験条件 摩擦回数 :500回、耐水研磨紙 :P800C―Cwで、パイル保持率60%以上
3)タオルの洗濯による脱綿率試験方法(TRI 法)
概要:タオル1枚を洗濯し、排水箇所にフィルターを置き、それがとらえた毛羽の量を測定する。洗濯は、全自動洗濯機を標準コースで使用。フィルターは、150μm メッシュを用いて脱落物(=脱綿量)を回収する。
脱綿率の算出:標準状態における試料質量(g)と脱綿量(g)を秤量し、次式から「洗濯による脱綿率」を算出する。
脱綿率(%)=(脱綿量/試料質量)×100
4)外観変化
概要:既存の試験機で試験をおこない外観を観察、再現試験の一種とみなす。試験機を使用する理由は、摩擦する動作が一定になるため。
試験機としては、以下の試験機が使われます。どの様な摩擦をするかが違います。
TO形ピリング試験機(試験布と羽根を摩擦)
ICI形ピリング試験機(試験布と試験布を摩擦)
マーチンデール磨耗試験機(試験布と摩擦布を摩擦)
5)指でなぞる
原始的ですが、商品を指でなぞり、毛羽が落ちないか確認することも有効です。
クレーム事例
その他、生地と別の生地が擦れて、毛羽が脱落する場合もあります。両方の生地から毛羽が脱落する場合も多いですが、中には、毛羽立ちが多い生地が、別の生地に擦れ、その生地の毛羽が脱落したクレームに遭遇することがありました。この場合、毛羽立ちの多い生地をいくら試験しても問題がわかりませんでした。この様に、脱落した毛羽を顕微鏡で観察し、色・素材を観察し、どちらの生地が原因になっているかの確認も必要となります。
初稿2018/08/26 改正2024/07/14