求める生地を探す方法

求める生地を探す方法

「これと同じ生地が欲しい」という要望をよく聞きます。では、どのようにして探せばいいでしょうか?

 まず、生地を入手する方法について
①メートル単位で購入:主に手芸等に使用する人を対象として販売されている
②1反単位で購入:主にプロを対象として販売されている
③委託生産

 ①は生地のカタログを作成しているところが多く、生地が探しやすい。生地に記号等が付いており、その番号を記録しておけば、再購入も簡単にできます。実売店もあり、生地を触ることもできますし、ネット等でも購入しやすくなっています。生産中止にならない限り、購入できるでしょう。
 ②は一般の人向けではないので、購入単位が大きくなってしまいます。生地問屋といったりします。
 ③は手間・コストがかかり、最後の手段だと思います。

入手しやすい生地、探しにくい生地

 もう一つの見方として、生地は以下の2つに分けることができます。
A)定番:プリントや刺繍など用途が決まり、ほぼ常時生産されているもの。
B)スポット:設計され、委託生産されたもの。
 定番の生地は入手しやすいのですが、スポットの生地をもらった場合などは極めて、探しにくくなります。

生地の分析方法

 では、記号等の記録がない場合どうすればいいでしょうか? 生地が残っているうちに、生地を分析します。
試験としては、
(1)混用率試験:【使用している繊維素材の種類とその割合がわかる】
(2)目付試験:【単位あたりの重さがわかる】

 生地のカタログには、混用率(例えば、ポリエステル65%、綿35%など)と目付が記載されていますので、この2つの試験を行うと、かなり絞り込まれ、入手できると思います。

それでも入手できない場合は、
(3)織物分解:【経糸の素材と繊度、緯糸の素材と繊度、経糸の密度、緯糸の密度(=打ち込み)がわかる】
を行います。
 注意すべき点は、分析した生地のデータ(実測値)と織物の設計データ(生機【きばた】の規格)は異なります。
 織物は、生機→織り上がって織機からおろす→リラックス処理→染色・整理加工と生産されますが、工程ごとに測定すると密度などのデータは変化しています。一概には、言いませんが、染色・整理後の規格をその織物の規格としています。対して、実際に織機にかける規格を設計値、生機の規格、機上規格などといいわけます。

 分析したデータから、生地問屋で、実測値から生機の規格を予想し、探してもらいます。
ただ、購入単位が最低でも1反(50mの場合が多いが、異なる場合もあり)になると思います。
 彼らは、生地のサンプルとして、「ハンガー見本」(生地と織物データを記載したもの)を保有しており、①で扱っていない定番も扱っています。その定番のうち、一反を在庫の中から販売します。扱う生地は産地・業界ごとに異なっており、生地によっては、同様な生地を扱っている産地の生地問屋でないとわからないこともあります。また、織物規格が似ている生地を代用として紹介される場合もあります。

生地を製織委託する

 これでも、見つからない場合は、製織委託しかありません。生地が存在しているのでどこかで製織されたということです。

その場合は、
(4)組織分解:【織り方がわかる】
も必要になります。
 直接、機屋さんに委託するよりも生地問屋さんを通して、その規格をスポットで製織した機屋さんや規格に近いサンプルを製織した機屋さんを探してもらいます。製織だけでなく製織後の整理なども産地によっては、得手不得手があるので、規格に近い生地を製織した経験のあるところへの委託が望ましいのです。
 ただ、委託する織物の設計データ(生機の規格)と、分析した生地のデータ(実測値)は異なりますので、実測値から予想して設計するので、要望する生地を完成させるためには、条件を変えて、何度か試作することになります。

求める生地が入手できますように。

初稿2020/08/15

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