教科書で取り上げられる繊維関連の実験

 繊維は、なくてはならない不可欠な素材ですが、かっては、人の手で作り出すことができず、天然素材に手を加えること(紡ぐ、績む)で繊維としていました。繊維を人の手で作り出すことは、人類の夢でした。高校の化学で取り上げられる繊維関連の実験

教科書で取り上げられる繊維関連の実験

 高校の化学で取り上げられる繊維関連の実験として【銅アンモニアレーヨンの合成】と【界面重合によるナイロン糸の合成】があります。(少なくとも私の時代はそうでした。しかし、若い人に聞くと知らないとのこと。単に選択の関係でしょうか?)

 前者は、セルロースから再生繊維としてのレーヨン(キュプラ)を作る実験です。セルロースは植物から取れるありふれた物質ですので、再生産可能でほぼ無尽蔵の素材です。しかし、繊維状のセルロースが綿以外にほとんどありません。植物からセルロース取り出し、溶かして、繊維に戻す。これが悲願でした。また、使い古しの綿生地からもレーヨンが再生できるという画期的な技術です。
現在では、綿を溶解させる溶媒の関係で、環境負荷が大きいことが問題となり、別の溶媒や製造方法も開発されています。しかし、人類が繊維を作ったモニュメント的な実験です。

 後者は、人類初の合成繊維であるナイロンを作る実験です。ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の2層の接触面でナイロンが合成されます。それをつかみだし、連続的に繊維として、ガラス棒などに巻いていきます。

 これらの実験は、学生の行う実験として、または、先生が生徒の前で行う実験として、原理を示すことができるとともに、見た目も面白く優れた実験です。

 教科書は、初心者に、興味を持ってもらうこと役目があり、また、時代の背景にも影響されます。かっては、日本は繊維立国であり、高分子の例として、繊維が取り上げられるのは当然と言えます。(今も、高校の化学でこれらの実験が取り上げられているのでしょうか。ご存じの方は教えて下さい。)

「繊維」の特性とは

 付け加えると、これらの実験で作られた繊維は、厳密に言うと作られたのは「繊維」ではありません。繊維は糸状だから繊維というわけではなく、繊維は「延伸」されて初めて、「繊維」になります。
繊維の特徴は、径に対して長さが長く、しなやかで柔軟性があり、細い割に強いことです。さらに、延伸をすることで、これらの特徴がよりあらわれます。

補足:絹も蚕が糸を吐き出す時、「延伸」しています。

初稿2020/11/30 

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