ガーゼマスクの通気度をカトーテック㈱KES‐F8‐AP1 通気度試験機で測定してみました。
通気度比較
サンプル | 通気度 (cc/cm2 sec) |
ガーゼマスク(アベノマスク) | 30 |
不織布マスク(一般) | 10~20 |
不織布マスク(高機能) | 20~30 |
織物市販マスク | 50~90 |
ネル生地(参考) | 30 |
*不織布マスク(高機能):通気性を維持しながらウイルスカット機能などを付加したもの
この表を見ると、アベノマスクと揶揄されていますが、通気度には問題はないと思います。ガーゼ生地ですので、生地マスクより通気性があるぐらいです。(洗濯による寸法の変化は、ここでは触れません。あくまで新品での比較)
どんなマスクも測定できるの?
この試験機は、「生地」の通気度を測る試験機であり、厚い生地は、生地が試験機に入らず測定不能です。アベノマスクよりかなり厚いグンゼのガーゼマスクは測定不能でした。
また、JISで定めた通気度の試験方法は、フラジール形法(JISL1096 通気度A法)です。
これも、構造を見る限り、厚い生地は測定できないと思います。
マスクの定義
そもそも、マスクの定義の中に通気度、フィルター機能について論じられていません。
マスクの定義は、
「天然繊維・化学繊維の織編物または不織布を主な本体材料として、口と鼻を覆う形状で、花粉、ホコリ等の粒子が体内に侵入するのを抑制、また、かぜなどの咳やクシャミの飛沫の飛散を抑制することを目的に使用される、薬事法に該当しない衛生用品。」
一般社団法人 日本衛生材料工業連合会
薬事法に該当しないので、現状は各所で、プロアマ問わず、手作りマスクが生産、販売されています。生地はプロが大量生産。マスクにするための縫製はプロもアマも行っています。この状況でも、今までにはなかった状態だと思います。しかし、この状態でいいのではないでしょうか?
大きな設備がなければ製造できないものを個人や中小企業が生産できるということであり、設備が不足している場合でも、ある程度、自給できる体制の方が非常事態では「強い」社会です。
衛生マスクとは
俗に「衛生マスク」、「エチケットマスク」は、そもそも定義がない様です。あえて言うなら、マスクの中で、ウィルスに対してのフィルター効果を謳わず、かぜなどの咳やクシャミの飛沫の飛散を抑制することを目的としたマスクということになるでしょう。
最近のマスクの分類
ここで、最近のマスクのカテゴリーを考えると下の様になります。
●医療用マスク━━━不織布マスク(基準を満たすもの)
●家庭用マスク━┳━不織布マスク
┗━生地マスク━┳━カーゼマスク
┣━織物マスク(ガーゼマスク以外)
┗━編物マスク
今までは、不織布マスクとガーゼマスクしかなかったのですが、マスク不足時に、各所で、プアマ問わず、マスクを作り始めました。生地は織物以外にも目の詰まった編物も材料として加わってきています。
2007年度上半期の家庭用マスク素材別生産比率は、
不織布:ガーゼ=98:2です *1)。
ガーゼマスクはほとんど使われていなかったことがわかります。(今回のコロナ騒動で、手作りマスクが不織布のシェアにどのくらい影響を与えたかは不明です。後日、統計結果が報告されるのでしょうか?)
1)「日衛連NEWS No.60」
(2007年12月発行 / 日本衛生材料工業連合会)
医療用マスク
医療用マスクについて付け加えると、これには、アメリカの規格あり、それに準拠して使用されています。
ASTM規格=【American Society for Testing and Materials:アメリカ試験材料協会】
主な試験項目としては、以下の様になっています。
- 細菌ろ過効率
- 呼気抵抗(通気度と反比例の関係。通気抵抗が大きいほど、通気度は小さい)
- 粒子捕集効率
- 血液不浸透性(患者の咳やくしゃみだけでなく、血液飛散から着用者を守る)
- 燃焼性
初稿2020/07/19