撚糸機の分類(アップツイスターとダウンツイスター)

アップ式とダウン式

 撚糸機は、撚りをかける機構で2通りに分類できます。
一つは、給糸ボビンを回転させ、出ていく糸に撚りをかけ、それを巻取る撚糸機。もう一つは、巻取りボビンを回転させ、巻取りながら撚りをかける撚糸機。
 前者はアップ式(またはアップツイスター)や後者はダウン式(または、ダウンツイスター)と言われます。
 回転させるための動力を発生させるモーターは重いため一番下に置くことがほとんどです。アップ式の場合、動力の必要な給糸ボビンを下に置き、巻取りボビンを上に置きます。そのため、糸は下から上に動くので、「アップ」と言う表現になります。巻取りボビンにも動力はいりますが、給糸ボビンの方を早く回す必要があるので、給糸ボビンをモーターの近くに配します。
 一方、ダウン式の場合、動力の必要な巻取りボビンを下に置き、給糸ボビンを上に置きます。そのため、糸は上から下に動くので、「ダウン」と言う表現になります。
厳密にいうと、これらの以外の機械(例えば、意匠撚糸機)もありますが、ほとんどの場合、この糸の動きでアップ式かダウン式かを区別できます。

「糸引き出し式」と「糸引き込み式」

 用語としては、アップ式を「糸引き出し式」、ダウン式を「糸引き込み式」という方もいます。漢字を使用するとイメージがはっきりすると思います。

名称撚り機構実例
アップ式 (糸引き出し式)給糸ボビン:動力あり 巻取りボビン:動力ありイタリー式撚糸機 ダブルツイスター
ダウン式 (糸引き込み式)給糸ボビン:動力なし 巻取りボビン:動力ありリング撚糸機
撚糸機の種類と構造

ダウン式の利点と合撚機

 ダウン式の利点として、巻取りボビンを回転させるので、給糸ボビンは、何本も使用可能で、合糸しながら撚糸することが可能です。このため、ダウン式撚糸機は特に「合撚機」と言われる場合があります。
 一方、アップ式であるダブルツイスター(強撚糸用)は、合糸はできません。そのため、糸を引き揃える「合糸機」で糸を合糸してから撚糸する方法や合撚機で合糸され撚糸された糸に追撚する方法がとられます。

撚糸関連用語

一方、アップ式であるダブルツイスター(強撚糸用)は、合糸はできません。そのため、糸を引き揃える「合糸機」で糸を合糸してから撚糸する方法や合撚機で合糸され撚糸された糸に追撚する方法がとられます。

 ここで、言葉の意味をまとめておきます。

  • 撚糸:糸に撚りをかけること
  • 合糸:複数の糸を引き揃えこと(実際は数回T/m程度の撚りが入ってしまうこともある)
  • 追撚:撚りのある糸にさらに撚りを加えること
  • 撚糸機:撚糸ができる機械
  • 合糸機:合糸ができる機械
  • 合撚機:合糸と同時に撚糸もできる機械
名称撚糸合糸
撚糸機×
合糸機×
合撚機
機械と可能な作業

撚糸機の選択

 撚糸機はギア比を変えることで撚り回数を変えることができますが、それができる範囲には限界があります。そのため、撚糸機の選択が重要になります。場合によっては、違うタイプの撚糸機を組み合わせることもあります。 

 撚糸機の組み合わせの一例をあげると、リング撚糸機で、3本の糸を合糸しながら、200回ぐらい撚糸し、その後、ダブルツイスターで2000回ぐらいまで追撚という作り方もあります。
 3本を合撚するには、リング撚糸機(甘撚り主体)を選択しますが、より数に限界があり、2000回まではできません。この場合、撚り上がった糸をもう1回、撚糸機に用いて追撚することもできますが、時間がかかってしまいます。一方、ダブルツイスター(強撚用)は、3本を合糸するために、前工程として合糸機が必要です。合糸するのであれば、そのための前工程で、リング撚糸機である程度撚りをかけておいたほうが、良いと考え、前述の様な工程を行います。(数値は一例。リング撚糸機でどの程度、撚りをかけておくかの配分はケースバイケース)
 リング撚糸機は一般に撚りが均一です。一方、ダブルツイスターはエネルギーコストに優れているため強撚が主体なため、この様な使い分けを行います。

撚りが入らない場合は?

 撚りの問題として、機械が撚りを与えても、糸にその撚り数が入らない場合があります。その場合は、糸に特別な前処理を行うことや、特別な機構を持つ撚糸機を使用します。
(これについては後日)

初稿2020/12/29