セルロース系繊維の判別方法

 セルロース系繊維の判別は難しいものです。その理由は、これらの繊維のほとんどがセルロースで構成されており、燃焼性や染色性などの特徴に大きな違いがないためです。

判別の手順

判別の手順は以下の通りです。

(1)顕微鏡で観察し、「綿」や「麻」の標準写真と比較する。極めてよく似ている場合、いずれかと判定します。綿や麻とは判定できないが、太さが不揃い、繊維長が短いなどの天然繊維の特徴があれば、「植物繊維」と判定。植物繊維には、イラクサ、ケナフ、竹、黄麻、やしの実繊維などがあります。
(2)顕微鏡で観察し、天然繊維でない(=化学繊維)と判断した場合
[その方法は、いくつかのサンプル間で太さが一定か、1本の繊維の中で太さが均一か否かなどで判断します。]
(2)-①:繊維軸方向にスジが観察されれば、「レーヨン」と判定します。
(2)-②-a:繊維軸方向にスジが観察されず、繊維表面が荒れていると観察されれば、「ポリノジック」と判定します。
(2)-②-b:繊維軸方向にスジが観察されず、繊維表面が滑らかと観察されれば、「キュプラ」または「リヨセル」と判定します。
(3)以上の観察でも不明な場合、燃焼性や染色性で綿やレーヨンに近ければ、「セルロース系繊維」と判定します。

判別が難しい例

 以下は判別が難しい例です。
(1)シルケット加工された綿:綿特有のねじれがなくなるため、判別が難しくなります。しかし、複数のサンプルを観察すると、綿特有のねじれが残っていることが多い。
写真:シルケット綿

 シルケット加工とは、綿糸や綿織物を引っ張りながら苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)水溶液に浸す加工のことです。この加工の目的は、寸法の安定化、染色性の向上、光沢を出すことなどで、「マーセライズ加工」とも呼ばれます。

(2)リボンストロー:特殊な口金を使って紡糸したへん平なテープ状のレーヨン。通常のレーヨンに比べ、幅が数倍広く、「その他の植物繊維」と誤認しやすい。しかし、太さが均一であるため、天然繊維ではないと判別が可能。
写真:リボンストロー

「キュプラ」と「リヨセル」の判別

 上記の方法でも、キュプラとリヨセルの区別がつきませんでしたが、最近この2つの区別をする方法がJIS化されました。

参考:ボーケントピック346(2023年1月)

判別の概要は、
(1)電子顕微鏡による表面観察で判定します。電子顕微鏡は光学顕微鏡よりも高倍率で観察できます。リヨセルは表面が滑らかで、キュプラは表面に薄いシワがあります。光学顕微鏡では、両者の表面が滑らかに見えるため、区別は困難です。
(2)赤外分光光度計での微妙な違いから判定します。
(3)特定条件下での再染色の微妙な違いを光学顕微鏡で観察することで判定します。

初稿2024/09/05