綿の収縮防止加工法

 綿は、汗を吸収して外に放出する能力に優れており、衣服に最適な素材の一つです。しかし、洗濯時に収縮するという欠点があります。この収縮を簡単に防ぐ方法として、洗濯と同様の加工を事前に行うことで、収縮をある程度抑えることができます。つまり、消費者が使用する前に生地や製品を加工すれば、使用時の収縮を小さくすることが可能です。さらに効果的な方法として、「綿の防縮加工」があります。以下にその詳細を説明します。

サンフォライズ加工

 サンフォライズ加工は、織物の防縮加工の一種で、生地に対して行われます。この加工では、布が水で収縮する量を事前に測定し、フェルトを張ったローラー上で一定の湿気を与えながら、布をあらかじめの予定量だけ収縮させて仕上げます。この加工により、縮みの原因である綿繊維の不安定な部分を物理的に安定させ、縮みを縦・横ともに1%以内に抑えることが可能です。

樹脂加工

 樹脂加工は、綿繊維の不安定な部分に樹脂を浸透させて固定する方法です。この加工により、水を吸収しても繊維が動きにくくなり、収縮を防ぐことができます。樹脂加工は、生地の段階で行われるのが一般的です。

シルケット加工(マーセライズ加工)

 シルケット加工は、生地を引っ張りながら苛性ソーダ液で処理する方法です。この加工により、繊維の表面が滑らかになり、光沢が生まれます。さらに防縮性が向上し、染料や薬品の吸収性が良くなり、強度も増します。一方、シルケット加工を施した糸で生地を作ると、いわゆる「綿らしさ」が少なくなります。また、顕微鏡で観察すると、綿の特徴的なリボン状の形態が消失します。この加工は、糸または生地の段階で行われます。

液体アンモニア加工(SSP加工)

 液体アンモニア加工は、マイナス33.4度で液化したアンモニア液を使用して、綿繊維を化学的に改質する方法です。加工した生地を縫製し、製品を高温処理します。

VP加工(Vapor Phase加工)

 VP加工は、縫製後にホルマリンガスを噴きつけて繊維内に浸透させ、形状を安定させる方法です。この加工は、主に縫製品に対して行われ、衣服の形状を保つために用いられます。

まとめ

 アパレル製品において、綿はポリエステルに次いで使用されている素材です。しかし、収縮という欠点があります。そこで、綿の収縮防止についてまとめました。なお、上記の加工方法のうち、液体アンモニア加工やVP加工は、サンフォライズ加工は、生地の段階で行い、綿の生地の収縮が悪い場合の改善方法としては使いにくいことがあります。

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