織物づくりの要「開口装置」 タペット・ドビー・ジャカードの特徴と使い分け

開口装置

 織物は経糸を特定のパターンで上げ下げし、そこにできた隙間(開口)に緯糸を通すことで作られます。この組み合わせパターンを組織といい、織物を作ると同時に意匠的な柄も作り出すことができます。この様な経糸を特定のパターンで上げ下げする機構を開口装置と呼びます。以下、開口装置について詳しく見ていきましょう。

(1)タペット:経糸を綜絖に通し、綜絖を綜絖枠にまとめて、カムやタペットにより上下運動させる機構です。織機の動力である回転運動をカムやタペットで綜絖枠の上下運動に変換します。機構が単純なため高速化が可能で、簡単な組織のみ織ることができます。綜絖枚数は2枚から8枚程度です。

(2)ドビー:経糸を綜絖に通し、綜絖を綜絖枠にまとめて、ドビー装置により上下運動させる機構です。ペグやドビーペーパーの「穴あり・なし」の情報から綜絖枠の上げ下げを制御します。最近はコンピューター制御が主流となっています。単純な柄のみ織ることができ、綜絖枚数は4枚から20枚程度です。

(3)ジャカード:経糸を綜絖に通し、綜絖を一本ごとにジャカード装置により上下運動させる機構です。紋紙の「穴あり・なし」の情報から綜絖の上げ下げを制御します。最近はコンピューター制御が主流で、複雑な柄を織ることができます。綜絖の本数より経糸の本数が多い場合、綜絖とジャカード装置の接続方法はいくつかあり、①同じ柄を複数織る(釜)、②大きな柄を織る(はつり)などが可能です。

タペット・ドビー・ジャカードの特徴と使い分け

 開口における経糸の上下分離の自由度は、タペット < ドビー < ジャカードの順に向上し、様々なパターンに対応でき、複雑な柄の織物を織ることができます。その一方、装置価格も高価になります。
 タペットやドビーでは、綜絖の本数変更により経糸密度の調整が可能であり、変更に伴う追加コストは発生しません。一方、ジャカードでは、経糸密度変更時に架物を作り直すため、コストがかかります。そのため、ジャカードにおいては経糸密度の頻繁な変更は経済的に非効率となります。
 また、ジャカードは単純な柄から複雑な柄まで織れますが、すべての組織に最適というわけではありません。「針落ち」(上げるべき経糸が正しく上がらない現象)が起きた場合、単純な組織では欠陥が目立ちやすくなります。一方、複雑な柄の織物では、このような小さな欠陥は全体のデザインに紛れて目立ちにくくなるため、ジャカードは複雑な柄の製作に適しています。

2025/07/02