絹とはなにか? 何を指すのか? これらをもう一度考えてみました。
JISでの定義
JISL0204『繊維用語(原料部門)第1部:天然繊維』によると、「絹」は、《蚕から吐出された繊維》とあります。これが狭い意味での「絹」ということになります。加えて、JISL0204では、「野蚕絹」、「アナヘ」も「絹」という用語に含めてよいとしています。「野蚕絹」は、《山蚕から吐出された繊維》と定義し、これらの山蚕については、7種類の学名が記載されています。
家蚕と野蚕
絹関係の書物では、蚕を家蚕、野蚕に分け、「絹」は、これらの繭から作られた繊維とする書き方が多いようです。さらに、家蚕、野蚕に限らず繭をつくる昆虫(絹糸昆虫というらしい)の繭から作られた繊維との表記もあります。糸にできる昆虫の種類は決まっており、柞蚕、天蚕、タサール蚕、ムガ蚕、エリ蚕、クス蚕、クリキュラなどが知られています。
繭から糸にする方法は問わず、繰糸して長繊維として取り出しても、ワタ状にして紡いで短繊維としても構いません。
素材としての絹
さらに、「絹」という用語は、繊維そのものを指す以外に、素材の構成比を表す場合はその素材を指すこともあります。さらに広くは、糸に限らず製品も含める場合もあります。
表記について
これらの違いについて、絹糸、絹製品などの表記をすることもありますが、完全には使い分けられておらず、混沌としているのが現状です。そのため、絹が何を指すか読み手が考える必要があります。
初稿2021/04/17