最近、あまり耳にしないかもしれませんが、「人工絹糸」という言葉があります。しかし、これは「絹」や人工的に合成した「絹」ではありません。
ネットの辞書で調べると
引用先:コトバンク:https://kotobank.jp/word/人造絹糸-82136〘じんぞうけんし〙 (繭から産する絹糸に対し人工的に製造する模造絹糸の意で) レーヨンおよびアセテートの長繊維をいう。製造法により、再生繊維糸のビスコース人絹・銅アンモニア人絹、半合成繊維糸のアセテート人絹に分類される。人絹。人絹糸。じんぞうぎぬ。
「人工絹糸」のという言葉
個人的には、人工絹糸は、レーヨンフィラメント糸のことと認識していましたが、いくつかの用語集でもアセテートも含むことが書かれていました。また、「アセテート人絹」との表記も見受けられます。
実際、ファッション業界では、絹の代わりにアセテートが使用されることがあります。これは、ポリエステルよりも発色がよく、さらに絹に近い質感があるためです。
これらの繊維の製造に関しては、絹からヒントをえて、液状物質を引っ張って糸にする〔=紡糸〕というアイディアが採用されたことが考えられます。、ここで使われる「人工」は、「天然物ではない」、「絹糸」は、「フィラメント糸」を指すと思われます。
工業化の歴史
工業化の歴史を振り返ると、レーヨンに続きアセテートが生産されるようになりました。このため、「人工絹糸」という言葉は、レーヨンに次いでアセテートまで拡張されたものと思われます。その後、ナイロンが登場すると、繊維を合成することが一般的になって、この言葉は使用されなくなったと思われます。
1901年 | レーヨン(ビスコースレーヨン)工業生産開始 |
1914年から1918年 | 第一次世界大戦 |
1924年 | アセテート工業生産開始 |
1929年 | 世界恐慌 |
1939年 | ナイロン工業生産開始 |
1939年から1945年 | 第二次世界大戦 |
1950年 | アクリル工業生産開始 |
1953年 | ポリエステル工業生産開始 |
初稿2024/04/13