「筬【おさ】の役目は?」と問われて、
「経糸の間隔を一定にするため」と答えた。
すると、「よろけ(筬)は?」となった。
織物の世界は奥が深い。
知っている人ほど、例外を思い浮かべて、言葉に詰まることがある。
では、筬の役目は、「経糸の間隔を設計通りにするため」としたら、どうでしょうか?
*よろけ筬:通常の筬は、筬羽がタテに等間隔に並んでいますが、よろけ筬は、斜めに角度を変えて山型に並んでいます。このため、筬の縦方向の中心で製織すると、経糸は等間隔になりますが、それ以外のところで製織すると経糸は等間隔になりません。筬の高さを変えられる(筬を垂直方向に移動できる)機構が必要ですが、糸の間隔を変えることができ、タテ糸を近づけたり、離したりしながら製織することができます。
織機の3つの基本要素
別の見方として、織機の3つの基本要素である「開口」、「杼打ち」、「筬打ち」から考えると、筬の役目は、「経糸の間に通された緯糸を強く織り込むこと」です。
また、筬には、経糸が絡まないようにして織りやすくすることも役目だとも言えます。特に筬目に入れる糸の本数や組織を選ぶことによって、近接する経糸を制御し、組織をはっきりさせることという役目を担うこともあります。例えば、擬紗【ギシャ】は筬目に入れる糸の本数を適切に選ぶことで、きれいに織れます。
「筬の役目」
まとめると「筬の役目」は、
「経糸の間隔を設計通りにするため」(ほとんどの場合、一定間隔)
「経糸の間に通された緯糸を強く織り込むため」
「経糸が絡まないよう織りやすくするため」
「組織と一つの筬目に入れる糸の本数から、近接する経糸を制御し、組織をはっきりさせるため」
となります。
今回は、織機の筬の役目についてだけ書きました。部分整経の場合は、畦筬(あぜおさ)、前筬(まえおさ)などは考えませんでした。畦筬は綾をとる役目を担っています。ただ、この場合、「筬」ではなく「筬綜絖」というべきだと思います。
初稿2023/12/10 改正2024/04/24