求められる色に染色するには?(コンピュータカラーマッチング)

CCMの考え方と機能

 求められる色を染色するために、染料の配合を決める作業を「色だし」(調色とも)と言います。この色出しをコンピュータで管理するシステムがCCM(コンピュータカラーマッチング)です。
 CCMの考え方は、すべての色は、独立している原色(赤・青・黄色)に分離でき、原色の組み合わせで、すべての色を表すことができるというものです。
 CCMは、色を3つの原色(赤、青、黄色)に分解する機能、染料の配合から染色される色をシミュレーションする機能、色の違いを表現する機能から構成されます。
 ここで、「独立している」とは、原色がそれ以外の色を含まないということです。例えば、赤であれば、赤以外の成分を含まないということです。

本当の原色は存在しない

 しかし、実際には、原色の染料は存在しません。例えば、反応染料の「赤」は少し濁っています。では、どの様に考えればいいのでしょうか?
 使用する染料の「赤」に、赤以外に青色が含まれているとすれば、シミュレーションされた染料の配合からその分の「青」の量を減らせば良いと考えます。
これを図で説明します。

色の合成 原色を使用する場合と色でない染料を使用する場合

 3つの独立した軸(赤・青・黄色)で、すべての色が表せますが、黄色を除いて、赤・青の軸だけとします。こう考えると、赤をAの量だけ、青をBの量だけ配合すると丸で示した紫の色になります。ここで、実際に使用する染料は赤だけでなく青も含んでいるとします。その染料をCの量だけ配合し、前述と同じ紫を作るとすると青はDの量を配合することになります。つまり、Dの量はBの量に比べ減少しています。この減少分はCの中に含まれた青の量になります。実際は青に用いる青も青以外も含んでいますので、もっと複雑になります。
 この様に原色ではなく原色に近い色の染料を配合して染色を行います。使用する染料が原色でない以上、原理的に艶やかな原色そのものはつくれない事になります。そのため、色出しは濁った色の方が再現しやすくなります。

実際の運用

 染色される色をシミュレーションするためには、原色に近い染料(赤、青、黄色)ごとに濃度を変化させて染色したデータが必要です。また、それらの染料も1種類ではなくいくつかの染料のデータを入力します。それは、染料の種類(素材により異なる)やコストや堅牢度などの条件を満たすためです。入力されたデータから様々な組み合わせを計算し、求められる色に一番近い染料の配合を選んで染色を行います。
 シミュレーションによる配合で、求められる色にならなかった場合は、染色した生地との色の差を再計算し、不足した色を加えて染色し、色を近づけていきます。

赤・青・黄色以外の組み合わせ

 加えて、赤・青・黄色でなくとも、独立した色に変換できる色の組み合わせであれば、それを原色として考える事ができます。例えば、緑・オレンジ・紫の組み合わせでも可能です。
 赤・青・黄色を3次元の独立した軸と考え、緑(青と黄色で合成された軸)・オレンジ(黄色と赤で合成された軸)・紫(赤と青で合成された軸)を3次元の独立した軸に変換したと考えれば、これでも成り立つことが想像できます。

初稿 2022/04/02