「撚る」―2つのイメージ


「撚る」これを2つに分けて考えるとイメージがしやすいと思います。

 ひとつは、紡績糸を作るための撚り。
 もう一つは、複数の糸を合わせるための撚りです。(これは、双糸などを作ります。)
 各々について詳しく説明していきます。

①紡績糸を作るための撚り


 化学繊維(人造繊維)のない時代は、天然繊維である綿や毛などの短繊維を「撚る」ことで、糸に紡いでいました。(この時代の長繊維は「絹」のみです。)
 時代が変わり、化学繊維の長繊維が製造される様になっても、わざわざ長繊維を切って、短繊維にして紡績する場合もあります。これは、長繊維の素材であっても、紡績糸の特徴をだすために行っています。詳しくはここ

②複数の糸を合わせるための撚り

 以下の様に糸を合わせて様々な糸を作ります。

あ)太い糸を作る

 糸を撚ることで太い糸を作ります。これは、流通していない太さの糸を作るためだけではありません。太い糸を直接、紡績や紡糸で作るよりも、細い糸を撚り合わせて、求める太さにした方が、糸が軟らかくなるためです。

 合成繊維の場合、太い糸を作るために、口金を太くするのではなく、細い糸を撚り合わせる本数を増加させます。例えば、24本のフィラメントを撚り合わせた50dの糸があるとすると、75dの糸では、36本のフィラメントを撚り合わせて作ります。(フィラメントの繊度は同じ。)
 この様にほとんどの合成繊維は複数のフィラメントから構成されます。この様な糸を「マルチフィラメント」と言います。一方、1本のフィラメントから構成される糸を「モノフィラメント」と言います。これは工業資材など軟らかさがあまり求められないもの使用されます。(例えば、釣り糸や網戸などを構成する糸。)

い)糸に丸みや艶を与える

 扁平な糸であっても、何本かの糸をまとめて撚ることで、糸に丸みを出すことができます。製織時には、扁平な糸よりも丸い糸の方が扱いやすくなります。また、適切な回数の撚りは、糸に艶を与えます。 

 「何本かの」と述べましたが、1本の場合を含みます。この場合、「追撚」【ついねん】と表現します。

う)意匠撚糸・機能糸を作る

 異なる色の糸や異なる太さの糸を撚ることで、意匠性の高い糸を作ることができます。また、素材の異なる糸を撚ることにより、機能性を持つ糸を作ることができます。(例:異収縮混繊糸など。)

撚りのイメージは2つ

 「撚り」は測る方法も単位も同じですが、この様に目的が異なる「撚り」を分けて考えることが必要です。撚りの単位は、「T/m」が主に使用されます。日本語での表記として、「回/m」が使用されることもあります。

 単位のT/mは、Twist per meterの略で、ツイストはねじることの意味

2つの「撚り」の使い分け

①と②は同時に行われることもあり、紡績糸の双糸の場合は、①の紡績する撚りを「下撚り」【したより】、②の糸を2本合わせる撚りを「上撚り」【うわより】と言いわけています。

JISでの使いわけ

 JISL1096 附属書Iでは、紡績糸(単糸)撚りは、2.5 cmで測定 [①に相当]と、双糸やフィラメント糸の撚りは、20 cmで測定 [②に相当]とに使い分けています。はっきり書いていませんが、これらの「撚り」を分けて考えていると思われます。

 モノフィラメント糸以外すべて糸に撚りが関与し、様々なバリエーションを持つ糸を生み出します。撚りがないと糸が面白くありません。この工程を担当しているのが撚糸加工業です。(撚糸屋【ねんしや】、撚り屋【よりや】と呼ばれます)
 撚糸加工は、大量の糸を長時間、撚糸機で加工することでコストを下げていますが、現在は、大量の注文もなく、撚糸加工業は苦戦している模様です。また後継者不足の問題で廃業が多く、今後の糸作りがどうなるか心配です。

初稿2015/04/29 改正2021/05/16

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