化学繊維はフィラメント糸として製造されますが、そのフィラメント糸をわざわざ切って「紡績糸」を作ることが多々あります。例えば、紡績糸も存在する化学繊維として、レーヨン、ポリエステル、アクリル、ビニロンなどがあります。
紡績糸とフィラメント糸の比較
紡績糸とフィラメント糸を比較すると以下の様になります。
別名 | 毛羽 | 感触 | 光沢 | |
紡績糸 | 短繊維、スパン糸 | 毛羽あり | 温かい感触 | 光沢なし |
フィラメント糸 | 長繊維 | 毛羽なし | 冷たい感触 | 光沢あり |
紡績糸の利点
では、紡績糸の利点にはどのようなものがあるでしょうか。
- 摩擦力向上
毛羽があることで、ロープなどは摩擦力を増加できる。
毛羽が絡み、生地ではスリップや滑脱の防止になる。
- 保温性が良い、温かい触感
ア毛羽が空気をため、保温性が良い。また、毛羽立ちにより、ふっくらと優しい手触りであり、温かい感触となる。
- 艶感が違う。
合成繊維のフィラメント糸の「つやつやした感じ」は時として安く見られる。
紡績糸の欠点
一方、紡績糸の欠点にはどのようなものがあるでしょうか。
- 繊度ムラ
紡績糸はその製造上、合成繊維のフィラメント糸よりも繊度のムラが大きくなります。ムラがある紡績糸を製織すると生地にスジに見えることがあります。これをマイナスに評価する人もいますが、「味がある」と評価する人もいます。
- 強度
強度に対しては、紡績糸の方が弱いと言うイメージがありますが、一概には言いにくく、パーロック紡績の様に切断強度に優れた紡績方法もあります(強度はフィラメント糸・紡績糸の分け方よりも撚り数の影響を受けます)。
また、フィラメント糸は一つの欠点で強度が格段に低下しますが、紡績糸では、欠陥が合っても、糸が絡み合いその強度を出しているので、実用的な強度として、キズに強ことから選ばれることもあります。
紡績糸を混紡して複合化する利点
紡績糸の使い方として、混紡して複合化することがあります。これにはどのような利点があるでしょうか。
混紡:他の素材と混ぜて紡績すること
- 静電気対策
合成繊維(一般に、水分率は低い)に綿など水分率の高い繊維や炭素繊維などの導電性繊維を混紡することで繊維にたまった電気を放電しやすくする。
- 寸法安定性
洗濯による寸法安定性がわるい綿に合成繊維を混紡し、寸法安定性を得る。
ほとんどの場合は、ポリエステルを混紡する。いわゆる【TC】
【TC】(ティーシー)テトロン・コットン紡績糸のこと。テトロン(ポリエステルの商品名の一つ)
- コストダウン
高価格な機能性繊維と綿を混紡することでコストを下げる。
- 意匠性(杢調など)
染色性が異なる素材を混紡し、単色で染めるより、複数の色で深みを表現する。①杢調(霜降り):あらかじめ黒く染めた糸を混紡(染色しても良い)、②両染め:複数の素材を染め分ける、③片染め(白残し):一方の素材を染色しない、④染色の濃度差を利用する方法などがある。
初稿2015/05/16 改正2021/05/11