力糸〔ちからいと〕とは

緯糸をしっかりと織り込むためには、緯糸に適切な張力を与える必要があります。そのため、製織中に、経糸を縮める方向に力がかかり、織物の幅を縮めてしまいます。これを防ぐために、織物の両端に2本ずつ太い糸を耳糸の外側に配置します。糸を2本配置するのは交互に上下させて緯糸と組織させるためです。
 この太い糸は、地の経糸とは別にボビンに巻いて配置し、張力を高めにしておきます。この糸を「力糸」と呼びます。

 太い糸を使わず、隣り合う2本の経糸を同じ綜絖に入れるパターンや隣り合う2本の経糸を組織的に同じように動かし方をするパターンがあります。これらの場合は力糸とは言わず、単に、「耳糸〔みみいと〕」と言っています。(地糸と全く規格が同じでも、耳糸と呼びます)

 力糸を上記の様に理解しているのですが、用語集などの文献では見たことがないので、方言かもしれません。別の地域では、別の名称で呼ばれているかもしれません。

 力糸については、文献や用語集では以下の意味で使われています。
・「あみそ」の別名
・「あみそ」を入れた綛を何綛か通して1本の糸を入れてひとまとめにする糸
 後者は、私はその呼び名を知りませんでしたが、「大ひびろ」、「入れ糸」、「首吊り糸」などなどの名前で呼ばれているようです。

あみそ:綛が乱れない様に使われる糸です。綛の糸の方向に対し、垂直に2から3ヶ所で糸を分け、綛の乱れを防止します。ひとつの綛には2から3ヶ所の「あみそ」が使われ、綛の糸の端(糸口)は、「あみそ」のひとつに結びつけておきます。

 なお、これらの技法はシャトル織機を使用する場合に適用されます。一方で、レピア織機では緯糸は織り込むたびに切断されるため、必要はないようです。また、手機の場合は、幅を出す方法として、伸子〔しんし〕が用いられます。

伸子(しんし):両端に針のついた細い木製の棒で、曲線形状となっています。この針を布の両端に差し、布を張るために使用される道具です。製織、染色(引き染め)、洗い張りなどの際に用いられます。

初稿2024/03/18